航空券付きのプランもございます。

KG+ 岩波友紀 作品展示

2025年4月12日-5月11日

ステートメント

  9万年前の噴火でできた巨大カルデラに5万人の人々が住む熊本県阿蘇地方には、日本一の広さを誇る草原がある。その草原が元になり、湧き水や肥料が生まれ、水田と畑が成り立ち、全てが循環して人の営みが成り立っている。 
  1000年以上続く阿蘇の草原はしかし、人が手を加えた「二時的自然」であり、牛の放牧か飼料のための採草、野焼きのいずれかをしなければヤブ化し森林に変化する。近年の畜産業の低迷、後継者不足によって、草原の面積は大正時代に比べ半減した。畜産農家だけでその草原を維持するのは難しく、バランスを維持していた自然との共生は岐路に立っている。
  私は2011年以降取り組んできた原発事故と、数年前の新型のウィルスにの経験も通して、人間は自然の一部であり、生かされていることを強く感じてきた。
  自然は私たちに被害も恩恵ももたらす。人間は自然を征服しようと躍起になり続けてきたが、それを受け入れて生を歩むことしかできないことを肌で感じ続けた。そしてここ阿蘇では長い間、それが実践され続けてきた。人の手によってあえて破壊し、新しく蘇る。
  2016年の熊本地震では、阿蘇地方も大きく破壊された。長い年月、自然による破壊と再生が繰り返され、私たちの生があることを実感する。野焼きは、人の手によってあえて破壊し、新しく蘇らせる。その炎を見つめていると、神話に出てくる蘇る火の鳥を思い起こす。
  「人はなぜ生きるか」という疑問は、私の創作の根本にある。その答えはともかく、人の生があるのは自然のおかげにほかならない。少なくとも1000年もの間、ここ阿蘇の人たちは時には私たちを破壊するその自然と共生してきた。
  このプロジェクトは、破壊と再生を繰り返す阿蘇での人と自然との共生を視覚的に伝えるものである。

展示期間
期間:2025年4月12()-511()

プロフィール
-----------------------------
岩波 友紀
長野県生まれの写真家。新聞社写真部勤務を経て、東日本大震災をきっかけに福島県に移住。土地と人との関係などをテーマにし、写真を通して人間とは何かを考えている。主な作品に「One last hug 命を捜す」、「紡ぎ音」、「Blue Persimmons」など。入江泰吉記念写真賞やWユージン・スミス賞などを受賞している。