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Collaboration

心を開き出会う芸術から生まれる、新しい知覚体験:アーツ千代田3331

2020.08.12

アートスペース「アーツ千代田3331」は日本各地や東アジアの文化芸術のハブとして日常にアートをもたらすきっかけを繋いでいる。ノーガホテル 秋葉原 東京でもキュレーションを担当する定期的な企画展示を行うほか、アーティストがホテル空間で鑑賞者と交流する企画も予定だ。ホテル空間で芸術に触れる意義、その先で私たちの日常や街に対する意識がどのように変化するだろうか。アーツ千代田3331代表、中村政人氏に伺った。

ホテルはアートに接する寛容な心を生む場所

現代アートは他の芸術ジャンルと比較しても網羅する範囲が広く、グラフィカルなものから概念的なものまで実に多様。ノーガホテル上野東京でもアーティストキュレーションを行う中村氏は、特に若手が提示する最先端の価値を紹介するうえで、ホテルは最適の空間だと話す。

「アーティストの作品性を空間に合わせてマッチさせやすいと言えます。現にノーガホテル上野東京で展示を行ったアーティストが、展示空間に触発されて新作に挑戦する意欲が湧いたという話も。良い機会をいただけていると感じます。」

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日本ではまだ「絵は美術館で鑑賞するもの」という考えが一般的だ。しかしホテルのように、日常から離れて心を開くことができる特別な場所でアート作品に触れる機会は、日常に戻った後も鑑賞者の知覚に変化を起こす。

「アート作品からだけでなく、日常でも対象から何かを感じ取るプロセスをいか多く経験するかが大事。知覚するとは、つまり心を開いて受け止めるということです。そのための寛容な環境も必要です。
メッセージ性の強い作品は展示環境自体をも生き生きさせる影響力があります。ノーガホテル 秋葉原 東京のような非常に寛容性ある空間でアートに触れると、知覚体験が一層意識化され心に刻まれるでしょう。」

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イメージの連想ゲームを起こす仕掛け

新たな知覚体験を起こすために必要なことは何か。自身もアーティストとして社会にメッセージを提示し続ける中村氏だからこその、信条とも言える回答が返ってきた。

「空間的な知覚体験、内容を吟味して感じ取ること、作者本人の考えを感じ取ること。作品鑑賞体験を点と捉えた時、次の点に繋げるために『イメージの連想ゲーム」が起きる状況が必要だと考えています。
アートはイメージの連想ゲームを始めることができるし、その過程に寄与することもできる。人間のイメージする力は想像以上に豊かで直感的で、その変化を誘導するのもアートの面白さだと思います。」

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秋葉原は実に多くの顔を持つ街である。訪れる人それぞれでイメージを連鎖させるポイントもさまざまだ。それぞれの街に対する先入観を崩し、異なる方向へイメージを向かわせることもアートには可能だと言う。

「ノーガホテル 秋葉原 東京でイメージの連想ゲームが生まれたとしたら、街の独特の複雑さに対する気づきが広がっていくのではないでしょうか。同じものを見ても受け取る意味が変化してくるでしょう。」

街の資源、地元住民と関わるから見える世界

中村氏の秋葉原との縁は、アーツ千代田3331がオープンしたのは2010年より前の1990年代後半まで遡る。自身が主宰する芸術活動団体「コマンドN」として、電気街の家電量販店の協力を得て実現した映像上映プロジェクト「秋葉原TV」(注1)がその象徴と言える。

「街の空間・物理資源に潜む歴史文化とアーティストのメッセージをつなげて作られた作品は、その蓄積の上に私たちが存在していることを知覚させる瞬間を生み出します。アーティストのメッセージに気づいた人だけが一歩先の世界へ入り込むことができる。知覚を育てて、心を開いた人にほど楽しみが待っています。」

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地域に開かれた場にすると言う設立当初からの運営方針とともに、地域住民とも積極的に関わり続けているのがアーツ千代田3331の魅力だ。ノーガホテルのコンセプトと通じる姿勢に私たちが共感も、コラボレーションの一因である。

「場所に対する意識は心に刻む体験があって生まれるものですから、アート展示以外にも多くのプログラムを企画しています。アーツ千代田3331の広場でアサガオの種を植える「明後日朝顔プロジェクト」、おもちゃを交換する「かえるステーション」などがその象徴的な例です。地域の人々との距離は、時間をかければかけるほどグッと縮まっていくと感じています。」

時間をかけて作る地域とのつながり

最先端の文化芸術と地域活動が心地よく共存する空間は、ノーガホテル 秋葉原 東京が目指すところでもある。しかし一朝一夕に実現できることではなく、時間をかけないと分からない地域のことがあると話す中村氏。取材前も広場で町会長と桜の開花を喜んでいた、と嬉しそうに話す中村氏の言葉には納得だ。

「観光客の方だけでなく、地域に実際に暮らす方々に「面白いよね」と言ってもらえる、心を開くことができる場でありたい。ノーガホテル 秋葉原 東京も地域の人々に「あのホテルいいよね」と愛される「街の顔」となるよう、私たちもアート作品の紹介を通して応援したいと思います。」

非日常を求めてゲストの皆様が集うホテルは、アートと向き合う究極の場所。その中でもそのホテルが位置する街のエッセンスを感じながらのアート鑑賞体験、そこで得られる気づきや感動は、日常にも強い余波を残すことだろう。

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(注1)「秋葉原TV」
1999年と2000年、02年に電気街一帯で催された展覧会。国内外のアーティストの短編作品をまとめた映像を、秋葉原電気街の協力店32店の店頭に展示されたモニター、約740台でエンドレス上映。通常はテレビ番組が放送されていることが多いモニターを一時的に占拠することで、街の風景を一変させた画期的なプロジェクトとして評価されている。(Artscapeより一部抜粋・編集)

Profile

プロフィール
アーツ千代田3331
旧練成中学校を利用して誕生したアートセンター。地下1階、地上3階の館内には、アートギャラリー、オフィス、カフェなどが入居し、展覧会だけでなくワークショップや講演会といった文化的活動の拠点として利用されている。
https://www.3331.jp/