複雑な地層のような秋葉原の歴史文化を深掘りするヒントを：Akiba.TV

2000年代前半からインターネット動画配信を通じ、秋葉原の街の姿を届けてきたAkiba.TV。ツアー会社「Akiba Deep Travel（アキバ・ディープ・トラベル）」も運営し、さらにリアルな体験にフォーカスした情報発信を展開している。ノーガホテル 秋葉原 東京でも同社とコラボレーションしツアーの企画運営を行っていく。公私で秋葉原に深いゆかりを持つ代表の吉岡有一郎氏、杉森浩一氏が語る、一筋縄では語れない多様な街の切り取り方とその魅力とは。

始まりは「好きだから残したい」という純粋な動機

吉岡氏がAkiba.TVを構想したのは2000年代前半。インターネットで動画やオーディオデータをやっとアップロードできるようになり、動画共有・配信サービスもなかった頃の話である。

吉岡氏（以下敬称略）「近い将来にインターネットの動画コンテンツがテレビに代わる存在になる予感がありました。電器街の秋葉原で毎日生放送して、平日昼間に働くサラリーマンがタイムセールの中継を見てネット通販で商品購入できるようになったら面白いんじゃないかと、今でいうライブコマースのアイデアを持っていました。」

大学時代、ラジオ番組を制作・放送するサークルでともに時間を過ごした杉森氏にも声をかけ、2003年頃から個人活動として秋葉原で商売をしている人々に取材しはじめる。撮影した動画を地道にブログで投稿し続けた後、2005年に法人化、本格的にAkiba.TVの活動を行うようになる。

吉岡「そんな大仰な気持ちはないんですけどね。単純に秋葉原の街が好きで、この活動を続けていけばアーカイブにもなっていいのでは、と思ったのが一番の動機です。」

ホテルとのコラボだから実現できるカスタムツアー

ノーガホテルとコラボレーションするツアーは、ホテル発で街全体や専門店を巡るツアーを、参加者のご要望に細やかに合わせ用意する予定だと話す。情報発信、ツアー業とも手がけてきたAkiba.TVのオリジナリティが期待できる。

吉岡「『何かよく分からないけど実際に行ってみたら意外に面白かった』という感想につながるような発見が沢山できるツアーにしたいですね。」

杉森氏（以下敬称略）「ツアーを行う以外の我々の強みはやはり動画配信。参加される方々には動画をとおして街を知る入り口に立っていただき、さらにもう一歩踏み込むためにツアーを体験してほしい。ノーガホテルさんが街を知る拠点の一つとなるようお手伝いをできればと考えています。」

縦横に広がる地層に一貫するクリエイティブ精神

吉岡氏、杉森氏とも、仕事に限らずプライベートの趣味でよく秋葉原を訪れているという。街のイメージについて伺った際、街を熟知している両者だからこそのぴったりな言葉が返ってきた。

杉森「電子部品、家電、オーディオ、パソコン、今はサブカルやeスポーツの街とあらゆる変遷をしているように見えますが、昔の電子部品の店がなくなったかといえばそうでもなく、そのままであったり、業態を変えて残っている場合も。さらに遡ると秋葉神社、神田明神の土地としての歴史があり、住宅街も残っています。時間的な変遷と各ジャンル毎の更新、この二つのベクトルが交差した地層のような街だと思います。」

「地層」の複雑性に触れた時、人は初めて秋葉原の本質的な面白さを知る事になる。ツアーでは歴史的な時間軸を追った説明を心がけているというAkiba.TVから見た、秋葉原の歴史文化の地層に一貫する特性とは何だろうか。

吉岡「根っこにあるのは、東東京全体に流れるものづくりの精神。興味を突き詰め共鳴したいというモチベーションも根幹では全員一緒だと思います。電気のものづくりの他、同人誌やコミケに見られる二次創作も、他所から拝借して別のものを作る独自の文化です。」

ここからクリエイティブなコンテンツが生まれ、次の新たな地層に繋がっていく。街の未来に対して希望が見える視点だ。

吉岡さん杉森さんも寄稿した東京文化資源会議が発行する同人誌

訪れる人それぞれから見える街の顔

Akiba.TVとしての情報発信のほか、2014年からはツアー業を行うAkiba Deep Travelも開始した。

吉岡「よく外国人の方にニッチで具体的な質問を聞かれます。しかしそういった情報は特定の場所に足を運ばないと分かりません。Akiba Deep Travelは、今後も海外観光客需要が増えていく中で、動画での情報発信以上にいかにリアルに秋葉原の状況を伝えようか考えた結果です。我々のことを『秋葉原を伝える活動をしている』と認知していただきありがたいですね。」

秋葉原は「行きたい街」として上位に入る一方、リピート率が低いという統計が出ている。Akiba Deep Travelがツアーを行うのは、「Deep」と言う名の通り、街を訪れる人々がその深さに触れ、再び来たくなるよう背中を押すことも使命にある。

吉岡「秋葉原を訪れる人それぞれにアキバの顔があります。同じ地図を見ても辿るルートや見えるレイヤーが異なり、趣味嗜好が重なるポイントも色々。未知のジャンルをリアルに伝えることがツアーの意義だと思います。」

ゲストの方々の顔が分かるホテル発のツアーだからこそ、秋葉原のディープな地層をすみずみまでよく知るAkiba.TV / Akiba Deep Travelを通して発見できることがありそうだ。ツアーを重ねてく中で、ノーガホテル 秋葉原 東京もまた、地域に根ざした頼れる情報発信拠点となっていくだろう。