この連載では、ノーガホテルが提案する上野周辺の歩き方をご紹介しています。 地域と深くつながるということは、そこにある建物やできごと、ものごとの背景も知るということ。今回は東京の中でも稀な古い街並みが残り、人々の生活が垣間見える谷中にクローズアップし前編・後編に分けてご案内します。
しっぽまで餡がたっぷり。
老舗和菓子店の可愛らしい小鯛焼き。
'谷根千'で人気の、下町風情漂うエリアのひとつ谷中。上野公園を抜けて東京藝術大学前の通称芸術通りを進んで行けば、谷中はすぐそこ。ノーガホテルからも歩いて15分ほど、気軽に出かけられる距離です。
まずは、東京藝術大学の西側にある和菓子店『桃林堂』からスタートしましょう。
1926年、昭和元年創業の老舗。本店は大阪ですが、創業の年には既に上野店もオープンしており、地元の人々に愛され続けてきました。
一番人気の小鯛焼は、手のひらにすっぽりおさまる可愛らしいサイズ。
しっとりとした薄い皮の中に、丹波大納言の粒餡がたっぷり入っています。「おめでたい(・・)」の気持ちを込めて、誕生日やお祝いごとなど記念日のギフトとしても喜ばれているとか。「手土産ならこれ」と決めてよく利用している著名人の方もいるそうです。旅のお土産にも、ぴったりかもしれませんね。ただし、消費期限は4日間ですので、気をつけて。
創業当時から販売している果物や野菜の砂糖漬け。当時は非常にハイカラな品だったそう。
店内にはホッと落ち着ける喫茶コーナーもあり、選んだ和菓子と抹茶をセットで楽しむこともできます。でも、散策はまだスタートしたばかり。抹茶はまたの日の楽しみにとっておいて、小鯛焼をほおばりながら歩いてみましょう。
200年の歴史ある銭湯がギャラリーに。
意外な空間で世界中の現代アートを楽しむ。
言問通りを越えて少し歩くと、左手の角に宮造りの建物があらわれます。
瓦屋根と入り口の暖簾は一見昔懐かしい銭湯。実はギャラリーなのです。1787年開業の歴史を持つ銭湯『柏湯』を改装し、1993年に現代アートギャラリー『SCAI THE BATHOHOUSE』としてオープンしました。
一歩中に入ると、外観とは別世界。コンクリートの床に真っ白な壁面、高い天井からは自然光も差し込む、開放的なギャラリースペースが広がっています。
宮島達夫、中村政人、森万里子など日本の先鋭的なアーティストの他、ジュリアン・オピーやイ・ブルといった海外の優れたアーティストも積極的に発信。今という時代の、最先端アートを堪能することができます。ノスタルジックな建物の中で発見する最先端。他では味わえない、格別な体験です。企画展のみの展示なので、展示情報をチェックしてから訪れてください。
昭和初期の風景そのままの、懐かしい空間。
再生された古民家に、地元のクラフトビールや
焼き立てのパンなどこだわりの店が集う。
『SCAI THE BATHOHOUSE』からほど近く、表通りに置かれた看板を目印に路地を一本入ると、奥に懐かしい木造家屋が集まる一郭があります。
築80年以上の古民家を再生させ、2015年にオープンした複合施設『上野桜木あたり』です。
明治以降、上野桜木町は上野や日本橋の商店主や事業主、東京美術学校や音楽学校(現東京藝大)などに関わる芸術家、さらには川端康成などの作家が住居を構える屋敷町になったといいます。そんな中、日本橋の老舗企業の創業者一族がこの地に建てた三軒家が、今の『上野桜木あたり』です。
谷中ビアホール内に飾られている昭和時代の三軒家
1938年に建てられた3棟は、いずれも漆喰塗の洋室、和室の座敷、専用の庭を備えた戸建て住宅で、当時としてはとても近代的なものでした。文化財としても価値の高いそれらの古民家を後世に残し、暮らしの文化を受けつぐこと、地域の魅力を発見・発信し、地域の人々・訪れる人々が交流できる場になることをめざして、複合施設として生まれ変わりました。
施設内の随所に古き時代の名残が。谷中ビアホール店内の壁に貼られた1964年の新聞は改装時に床を剥がしたら出てきたものだそう。
現在は、天然酵母のビアホール「谷中ビアホール」、ノルウェー発の小規模ロースタリーとして北欧コーヒー文化を牽引してきたフグレンが運営するベーカリー「VANER (ヴァーネル)」、塩とオリーブオイルの店「おしおりーぶ」などのこだわりの店のほか、現代アートの事務所や建築家の住居が集まりイベントも開催されるなど交流の場としても活用されています。
「VANER(ヴァーネル)」
左から「パン・オ・ショコラ」「サワードウ」。ノルウェー産の小麦を使用しているパンは、日本在住のノルウェー人にも祖国の味を楽しめると評判。
おしおりーぶ
ポリフェノールが豊富なオリーブの葉を粉末状にしたもの。実を食べるイメージが強いが、葉や種を扱った商品のバリエーションも多岐にわたる。
ゆったりとした時間が流れる、昭和初期の風景そのままの懐かしい空間。地元の常連さんをはじめ、国内や海外からの旅行者など、毎日たくさんの人々が訪れ、いつもあたたかな笑い声であふれています。
ここでしか味わえない谷中ビールで乾杯!
個性豊かなクラフトビールが揃うビアホール。
『上野桜木あたり』のビアホールで、ひと息入れましょう。一番手前に建つ1棟の1Fにあるのが『谷中ビアホール』です。
ここでは、オリジナルで開発された谷中ビールなど8種類の個性豊かなクラフトビールと、食材のうまみを引き出す伊賀長谷園の土鍋料理のおつまみが味わえます。
土鍋で蒸したおつまみ
通常よりじっくり時間をかけて熟成させたという谷中ビールは、コクのあるまろやかな口当たり。茶褐色の深みある色合いは、谷中の古民家をイメージしたそうです。谷中ビールを含め、谷中シリーズと呼ばれる「谷中ドライ」、「谷中ゴールデン」、「谷中ビター」の4種類はここでしか味わえない貴重なビール。
すべて味わってみたいなら、「谷中シリーズテイスティングセット」がおすすめです。すっきりとした辛口のドライ、華やかな香りのゴールデン、深い苦味のビター、それぞれの個性の違いを比べてみるのも楽しいですよ。
行列覚悟の名店で味わう
ふわっふわっの穴子寿司。
江戸前の伝統を堪能する至福の体験。
ほろ酔い気分でビアホールを出たら、江戸時代から続く寺町谷中を歩きましょう。今も70以上の寺院が点在しています。
三崎坂へ向かうと、坂の両側に次々とお寺があらわれます。また、この通りにはカフェや雑貨店、Tokyobike Yanaka Rentalsなど雰囲気のある店も多いので、ぶらぶらと歩くにはぴったり。
そんな三崎坂を下っていくと、よみせ通りにぶつかる少し手前に穴子寿司の名店『乃池』があります。
創業50年を超え、『乃池』といえば穴子寿司といわれるほどの人気で、その味を求めて平日でも行列ができることも。お寺への参拝やお墓参りの帰りに立ち寄ったり、お寺での行事、集まりの際に大量に注文が入ったりして、いつしか店の看板商品になったといいます。90歳を超える大将の乃池さんは、観光連盟のトップや町内会長を務めるなど、地域のコミュニティ作りと歴史的な谷中の街並み保存にも尽力した、やさしい語り口の方です。
名物の「名代 穴子寿司」は、穴子だけの8貫盛りです。酒、みりん、さとう、しょうゆでふっくらと煮た穴子が、しゃりを包むように握られています。
その上に煮汁を煮詰めたツメがさっとひと刷け。口に入れると、脂が乗ったふわふわの穴子がとろけるようです。濃厚でありながら決して甘すぎず、上品な味わい。これぞ江戸前の穴子寿司。夕方に訪れるなら、折詰をノーガホテルに持ち帰るお土産にしてもいいかもしれません。事前に電話で予約をしておけば、並ばずスムーズに買えます。
■桃林堂(ノーガホテルから徒歩で約20分/自転車で約8分)
https://www.tourindou100.jp/
住所:東京都台東区上野桜木1-5-7
電話番号:03-3828-9826
営業時間/9:30~17:00
定休日/毎週月曜日と1月1~3日(月曜日が祝日の場合、お盆・年末年始は営業)
■SCAI THE BATHOHOUSE(ノーガホテルから徒歩で約23分/自転車で約9分)
https://www.scaithebathhouse.com/ja/
住所:東京都台東区谷中6-1-23
電話番号:03-3821-1144
営業時間/12:00~18:00
定休日/月曜・日曜・祝祭日休館(企画展開催時期のみの営業)
■上野桜木あたり(ノーガホテルから徒歩で約24分/自転車で約9分)
http://uenosakuragiatari.jp/
住所:東京都台東区上野桜木2丁目15−6 あたり
営業時間/8:00~20:00
定休日/月曜定休(月曜が祝日の場合は営業、翌火曜日休みの場合あり)
■谷中ビアホール(ノーガホテルから徒歩で約24分/自転車で約9分)
https://www.facebook.com/yanakabeerhall
住所:東京都台東区上野桜木2-15-6 上野桜木あたり1-1F
電話番号:03-5834-2381
営業時間/平日12:00〜20:30(L.O 20:00)、土日祝11:00〜20:30(L.O 20:00)
定休日/月曜定休日(祝日に重なる場合は翌平日)、年末年始休業(12月28日~1月4日)
■すし乃池(ノーガホテルから徒歩で約32分/自転車で約12分)
http://www.sushi-noike.com/
住所:東京都台東区谷中3-2-3
電話番号:03-3821-3922
営業時間/月~土11:30~14:00(L.O. 13:30)、16:30~22:00(L.O. 21:30)、日・祝11:30~20:00(L.O. 19:30)
定休日/水曜日
*この記事は2019年12月に作成しました。最新の情報はご確認をお願いいたします。