--「リカーズのだや」さんは最初から酒屋だったわけではないようですね。
(「リカーズのだや」代表 佐藤幸平さん)戦前、祖父の代に味噌や醤油の量り売りの店として始まりました。父の代で酒屋になり、一代で現在の業態のベースを作ってくれていたので、私が3代目として継いだ時にはそれを基盤として更に新しいことにもチャレンジすることができました。
国内の生産者の方々との直取引を始めたことは大きいです。酒類の勉強をしていく過程で自然と生産者の方々とも仲良くなっていき、その流れで卸しを通さず直取引のみで商品を仕入れる事が可能になったんです。直取引ができない海外の商品も、信頼できるインポーター数社に絞って取引をさせていただいてます。
--生産者の方々とのつながりを大事にしているんですね。お店の中にも見学ツアーの様子やサイン、写真が至るところに貼ってあるのはそういうことなんですね。
そうですね、商品を選ぶ基準になるのは味というより、一緒に仕事をする生産者やインポーターを信頼できるかというのが非常に大事です。信頼できるインポーターが取り扱う生産者や商品はやはり味を信頼できる。信頼を通じて仕事としても人間同士のつながりとしても輪が広がっていく、という感覚です。
--「つながり」というと、下町・千駄木ご出身の佐藤さんらしい観点だと感じます。地元視点からのこの地域の魅力はなんだと思いますか。
最近は外からも多く人が出入りするようになり変化している節もありますが、そんな中でもやはり下町らしく人とのつながりが深い地域だと思いますね。商店街で大きなお祭りを開催したり、新しく越してきた人でも地域に参加しやすい機会があるのが良いところだと思います。
一番変わったと思うのは観光客が増えたことです。昔は肉屋や魚屋など生活需要に寄り添ったお店が多かったですが、今は海外観光客をターゲットとした喫茶店が増えたり、街全体で英語表記が増えた印象があります。ちなみに海外の方には梅酒が人気ですね。
--ワインをおすすめする時はどのようなことを心がけていますか。
お客さんの予算や料理の種類、お酒を飲むシチュエーションなどを伺ってご提案することが多いです。例えば屋外で飲むのか、家の中で飲むのか、誰と一緒に飲むのかでも味わいの感じ方は変わります。
ワインについてさまざまなメディアで取り上げられる機会が増えて嬉しく思う反面、知識を詰め込まないと楽しめないのではないか、と足踏みしてしまう方も多くもったいなく感じています。飲んで美味しいか、まずは気軽に体験する機会をみなさんに持ってもらいたくてお店としても試飲会を開催しています。
日常で飲むワインは神経質に考えなくても大丈夫。開封後にもう一度コルクでふたをしても問題ありません。最低3日は楽しめますし、むしろ開栓した翌日の味わいの方がこなれた美味しさになったりするんですよ。一口飲んだ時のインパクトが強い華やかなお酒よりも、長い時間をかけて少しずつ飲み続けられるお酒の方が「良いお酒」だと思います。そういったお酒を、生産者の方々とも長くつながりながらより多くのお客さんにご紹介していきたいです。